悪のジオン星人と呼ばれて~リフレーミングで気持ちや場面が変わる③~

人生をワクワクで書き換えるWEBライター、horihoriです。

進撃の巨人のエンディング、Linked Horizonの「暁の鎮魂歌」の歌詞に、「立ち位置が変われば正義は牙を剥く」という言葉があります。

誰かにとっての正義も、誰かにとっては悪にもなる。
そんな「正義」と「悪」を自分が意識し始めたのは、幼い頃に見たこの作品でした。

目次

機動戦士ガンダム

子供の頃に見たアニメは

みんなや町を守ってくれる者、味方=正義
町を破壊して侵略してくる者、敵=悪者

だと思っていました。

機動戦士ガンダムは、ガンダムのパイロットであるアムロ・レイとその仲間たちが乗るホワイトベースの所属する地球連邦軍が、ジオン公国軍と戦う物語。

しかしどうやら、連邦軍が戦う相手であるジオン軍にもそれ相応の理由があるみたいだと、幼心でも感じることができました。アニメ初期のオープニングで、ジオンが何のために連邦と戦っているかが語られています。

それは、ジオン公国が地球連邦政府に対し宣戦布告をして、独立戦争を仕掛けたという理由からです。

※作中のネタバレがありますので、ネタバレ禁止の方はここで閉じてください。
※状況や数字は原作小説やアニメやコミックなどで状況が違う場合もあります。説明しやすいように混ぜて解説しますのでどうかそこはご容赦くださいませ。

知ってるからはよやれ!って方は、どうぞお進みくださいませ。

悪のジオン星人と呼ばれて

最近、YOU TUBEのコメントまとめ動画などで時々見かける単語があります。

それが「悪のジオン星人」という言葉ですが、なかなか上手いことを言うと思いました。

たしかに作中のジオン公国は、地球にコロニーを落として破壊したり、肉親同士で殺し合ったり、居城?が悪のそれっぽかったり(誰が作った?)と、悪の雰囲気を醸し出していますね。

しかし、それに至る理由というものが必ずあると疑問に思い、今回のネタにしてみました。
設定としては存在していますが作中で割愛されまくっている、「機動戦士ガンダムの前史」について触れていきたいと思います。

世界情勢は、増えすぎた人口を地球に留め置くことに限界が来ていたために、宇宙への移民に人類生き残りの活路を見いだし、人々をスペースコロニーへ強制的に移住させる政策が取られました。
しかし、地球にいながら宇宙の管理支配を行う連邦政府やその既得権益に近い人々に対して、宇宙移民は反発してコロニーの自治権を求め始めます。

ジオン・ズム・ダイクン

ジオン・ズム・ダイクンはこの宇宙世紀の政治家で、ジオン公国が設立される前のサイド3で共和国の首相を務め、またガンダム世界での重要キーワードとなる「ニュータイプ」の元となる「ジオニズム」を提唱しました。

機動戦士ガンダム本編開始ではすでに故人となっていますが、シャア・アズナブルことキャスバル・レム・ダイクンと、セイラ・マスことアルテイシア・ソム・ダイクンの父親としての方が馴染みが深いですね。

それで、彼の提唱したジオリズムは2つの思想が組み合わさったもので

1・地球を聖地として保護し、全人類は宇宙へ住むべきだという考えのエレズム
2・スペースノイド(宇宙居住民)は経済的・政治的にも自活が可能で、連邦政府と対等な自治権を持つ国家の建設をすることができるという信念のコントリズム

そしてそれは、広大な宇宙空間の環境に適応する進化した人類、後にニュータイプと本編で語られる存在につながっていく

というもの。政治家でもあったけど、思想家の一面も持ち合わせていたと考えられます。

そして彼は自身の思想を実践するために、宇宙世紀0058年にサイド3を共和国として地球連邦から独立させてその初代首相に就任しました。
ですが、連邦政府は当然それを容認せずに経済制裁や軍の派遣などで圧力をかけましたが、サイド3側との溝は深まっていきます。

ジオンの死と、ザビ家の台頭

そのジオンの元には、デギン・ソド・ザビ親子やジンバ・ラル(ランバ・ラルの父)といった人物が、彼の元に集っています。

特にデギンは、ジオンの盟友として共和国独立に尽力するも後に対立していきますが、ジオンの死までは両派閥のパワーバランスで共和国は保たれていたようです。

しかし、宇宙世紀0068年にジオンは議会での演説中に突然倒れてしまい、そのまま急死してしまいます。
病死とも、連邦あるいは政敵であるデギンによる暗殺論が持ち上がっていますが、死の真相は明らかではありません。
ですが、どういう理由であるにせよ、その状況を上手く生かして共和国の実権を握ったのはデギンでした。

そしてサイド3は、ザビ家独裁による「ジオン公国」に移行していきます。

※共和国の名称は各作品ごとに違っていて、固有名詞を使うと混乱を招くのでここでは共和国とだけ表記させていただきました。

ジオン公国の成立

デギンは、「ジオンは連邦によって暗殺された」という情報操作で民衆の支持を得て、ジンバ・ラルなどのダイクン派の政敵を排除・糾合し、ジオンの死と混乱に乗じてザビ家に権力を集約させることに成功しました。

そして、連邦に対抗する勢力の糾合を急ぐために、共和国制を廃して自らを公王としたジオン公国を設立します。

それにしてもこのジオン公国という名前ですが、そこは「ザビ公国」とか「(サイドの名称)公国」として、ザビ家や場所の名前を冠していないことに不自然さを感じます。

そもそも個人名であるジオンの名前を、公爵が治める国である公国という名前を名付けたことに、そこはデギンなりの思惑があったのではないかと感じました。

・ジオンの名前を冠することで、同じスペースコロニーに住む人々の共感を得て、我々ザビ家が正当なジオンの後継者として連邦に対するというアピール
・ジオンという主君に対して、臣下の形を取る意味で公王とした
※また小説版でシャアは、デギンが父ジオンの名前を国名に使ったのは、自分が暗殺したという嫌疑を避けるためだとも語ってる。

このことは、ザビ家に実権を集めることで地球連邦に対抗するスピードを速め、サイド3の民衆の支持を集めることに成功したので、デギンは上手に立ち回ったと考えられます。

しかし、そんな経緯でサイド3の実権を握ったデギンですが、早々に長男であるギレンに実権を譲って隠居してしました。

ギレンの野心と1年戦争開戦

このギレンは、本編でも人を惹きつける演説をしていることでもわかる通り非常にカリスマ性の高い人物で、サイド3の民衆をその言葉で惹きつけ、軍内部にも多数の信奉者がいます。

その言葉を見るに、彼なりに連邦の支配から脱却して独立を果たすというジオンと同じ意志を持っていることが感じられますが、それは優良種たるジオン国民が地球圏を管理運営するというもので、いわゆる選民思想です。
ジオニズム
ついては、その選民思想を裏付けてジオン公国のナショナリズムを補強して国内の反連邦の気運を高めるための政治的な方便としては使える程度の認識であったようです。

実権を父から譲り受けたギレンは、連邦との戦争を見据えて軍備の拡張に邁進していきます。
その最たるものがモビルスーツの開発で、対連邦軍決戦の切り札として弟のドズルに命じて極秘裏に開発をさせていました。

そして宇宙世紀0079年1月3日、ジオン公国は地球連邦政府に対して宣戦布告。
ここに、後に1年戦争と呼ばれるジオン独立戦争が開始されました。

しかし、この開戦後1週間でこのジオン軍の行った「ブリティッシュ作戦」は、連邦寄りであったサイド1・2・4コロニーに住む大量の民間人を毒殺。
また、サイド2コロニーの一つである「アイランド・イフィッシュ」を質量爆弾とし、連邦軍本部のあるジャブロー(南米アマゾン周辺)を攻撃する「コロニー落とし」を決行。結果は、連邦軍宇宙艦隊の必死の抵抗によりジャブローへの落下は阻止されたが、オーストラリアのシドニーを含む3カ所に分裂した本体が地球上に落下し、合計で総人口の約半分(50億人とも)を死に至らしめる凄惨なもの。

連邦及びそれに追従する軟弱を滅ぼし、そして人類の上に優良種たる我々ジオン国民が立つ

そんなギレンの意志を体現したかのようなこの行為によって、ここに「悪のジオン星人」の悪名が完全に成立したと言えます。

宇宙移民の自治独立を求めた果てに

ジオン・ズム・ダイクンが始めたスペースコロニーの自治独立を求めた思想や行動は、道半ばで倒れてザビ家に引き継がれる形となりました。
しかし、ザビ家は自己の権力を集約して独裁政治を行い、独立戦争の名のもとに多くの犠牲者を出す惨事を引き起こし、戦争の果てに自分たちが現在の連邦政府に取って代わり地球圏を支配しようと目論みました。

それでもデギン・ソド・ザビの行為は、ジオンの死の混乱に乗じて権力の奪取しただけで、それだけならよくある権力争いで片付けられる事象です。

ですが、ギレン・ザビが総帥として始めた独立戦争で行った民間人の虐殺や地球へのダメージを与えるコロニー落としは、コロニーの自治権を求めて、地球を未来に引き継ぐために保護するという、ジオンの考え方を歪めている行為と言えます。

そして、その果てが地球連邦政府のポジションに自分たちザビ家(主にギレン自身が)が収まる野心のためにジオンとその思想を利用したとも取れますね。
父デギンにすらその考え方を危険視されていたので、ギレンは過激すぎたのです。

宇宙世紀に及ぼした影響力

この機動戦士ガンダムシリーズにおけるジオン公国とザビ家は、宇宙世紀0100年以後もその影響力を及ぼしていて、いわば呪いとなって後の物語の敵役として主人公たちに立ちふさがります。

ジオン公国としては機動戦士ガンダムで終焉していますが、ジオン共和国として宇宙世紀0100年までは存続しました。しかし、残党勢力は地球圏内外で連邦政府に反発乱を起こして事あるごとに騒乱の元となっています。
(火星にまでジオン軍の残党はいるそうな)

また、ジオン・ズム・ダイクンは名前をよく聞く割には作中での描写が少なく、小説版で他の登場人物に語られる他は、アニメだと「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」でセリフを話して動いている姿を確認できます。
(まあ出てくるたびに演説中に倒れてしまう描写しかされない方なので、不憫ではある…。)

その他、主戦派とも穏健派とも(デギンとの主張が入れ替わっていたり)、キリストの再来やら民間レベルの政治運動家でしかなかったとか、ニュータイプ論も結局は選民思想であったなど、評価や役割も作品ごとに変わっていきますが、捉える人ごとに時代ごとに変わるのは人の世の常なので、そういう意見や見え方もするんだなと感じます。

ガンダムは新たな物語や設定が拡張されており、宇宙世紀の枠すら超えて今なお広がり続けていますので、今後はどんな作品が出てくるのか楽しみで仕方がありません。


今回は以上になりますが、いかがでしたか?

自分はニュープロでライティングやキャラクターなどの考察に必要な考え方を身につけることで、新たに物語の考察というものに挑戦を始めることができました。

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今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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